超弦のための特殊相対論2 テンソル

相対論で重要になるテンソルについて述べる。これは一見、添字が多く複雑に思えるが、実は方程式を見通しよく記述してくれる非常に良い性質を持っている。 以降と表す。こうすると、たとえば と書ける。 さて、というベクトルは、基底ベクトルを用いて と表…

超弦のための特殊相対論1 光速不変とブースト

光速不変の原理 まず初めに、光速不変の原理から、ローレンツブーストと呼ばれる座標変換を導く。 光速不変の原理とは次のような要請のことである: ある座標系Sで光の速さがであったとき、Sに対し、方向に一定速度 で運動する座標系Sから見ても光の速さはで…

このブログのこれから

長らく放置してきた当ブログですが、ついに再起動のときが来たようです。 内容としては弦理論の解説記事、およびその解説に用いられている予備知識の解説、というのが主になると思います。 その予備知識とは?弦理論は一般相対論と量子力学を矛盾なく融合で…

弦理論1.3 ポリャコフ作用

NG作用は、世界面の面積と解釈できるため非常に分かりやすいが、について多項式的ではなく、扱いにくい形をしている: また経路積分は、分配関数 を計算することで行われるため、NG作用の経路積分は面倒な処理を要求されることになる。 実は、古典論的にNG作…

弦理論1.2 南部後藤作用

弦の作用を出すにあたり、点粒子の相対論的な作用が世界線の長さ(に比例するもの)で与えられていたことを思い出そう: ここから、弦の作用は世界面の面積を表すのではないかというアナロジーができる。これは南部後藤作用(以後NG作用)呼ばれ、次式で与えられ…

弦理論1.1 背景時空と世界面

D次元ミンコフスキー空間 における、ポアンカレ対称性を持った弦の古典論を考える。弦が掃く2次元面を世界面という。世界面上のパラメータを とする。世界面上の点はD次元空間では で記述される。当面、 を時間的、 を空間的なパラメータと考えることにする…

歴史1

物理学に、力学や電磁気学、もっと進んで量子力学や相対性理論があるように、人間の歴史にも理論がある。素人から見ても、これは歴史学の標準模型と呼んでよいのではないかと思う。 素粒子物理学における標準模型の基本要素はクォークやレプトン、光子などの…

一般相対論

一般相対論について簡潔な解説を書きます。一般相対論というのは初見では難解そうに思えますが、実は非常にシンプルな理論です(方程式を解くのは大変ですが)。ここでは基本的な概念の解説と、測地線の方程式/アインシュタイン方程式の導出、そのあとは宇宙論…

1月14日の日記

2限の確率と統計という授業でレポートが出ていたので取り組む。最尤推定法は授業でやったということだったから、パラメータ推定についてフィッシャー情報量を相対エントロピーから導出したあと、この逆行列が共分散行列の下限となること(クラメールラオ不等…

特殊相対論

ローレンツ変換 光速度不変の原理は経験的な直感とは相容れないもので、この原理が見出された歴史的な過程もそれ自体面白くはありますが、今回はそういった議論を全て省いてこれを出発点とします。 光速不変の原理とは、慣性系によって光の速度が変わらない…

相互作用を担うゲージ粒子についての疑問

現代物理学で扱われる4つの相互作用には、それぞれ伝達を担うゲージ粒子がある。グラビトンは重力を伝えるし、光子は電磁気力を伝える。 これに関連して2つの疑問がある。 (1)スピン相互作用を伝えるゲージ粒子は何か いま2つのフェルミオンを用意する。はじ…

特異点研究会に行ってきます

2019年も終わりです。結局ほとんどブログ更新できませんでしたorz 26日から28日まで、秋田で行われる特異点研究会なるものに参加してきます。ここでいう特異点というのはいわゆる時空の特異点というやつで、曲率とか物質密度が無限大になるような点のことで…

量子論の歴史5 正準交換関係の導出

ハイゼンベルグの考え ボーア理論における問題解決の手順は、「まず古典論で解く→そのうち量子条件を満たすもののみを選ぶ→対応原理で翻訳する」という流れであり、初手が古典的なためある意味中途半端な理論だった。ハイゼンベルグは、ボーア理論よりさらに…

量子論の歴史4 対応原理

原子からの光の射出について、古典的な説明とボーア理論による説明は一見したところ全く異なっていた。 射出される光の振動数は、古典的には で与えられるのに対し、ボーア理論では で与えられる。後者は実験事実とよく合致していた(リュードベリの式)。 こ…

量子論の歴史3 原子発光

原子から光が出るメカニズムについて、古典的な説明とボーア型の説明を併記する。 古典的説明 原子内を周回する電子は、加速度運動をするため電磁波を放出する。その電磁波の振動数は、 で与えられる。Tは電子の周回運動の周期で、nは自然数。 ボーアの説明 …

量子論の歴史2 原子

前回は、電磁場のエネルギー量子化ののち、量子化条件が電子にも適用できる形に一般化されたことを書いた: これが、ボーアソンマーフェルトの量子化条件である。実はこの式は、見慣れた正準交換関係 の原型である。あと何回分かの記事で、この量子化条件がい…

量子論の歴史1 電磁場

量子力学の教科書には、序盤からいきなり無限次元の複素空間がうんたらとか、固有値固有ベクトルがくんたらだとか、古典物理学とかけ離れたよく分からない用語や概念がいくつも登場する。その理論の建設がどのようにして進んだのかを、特に正準交換関係 が歴…

今日の疑問 12月

毎日最低一つ、その日疑問に思ったことを書きとめておく。括弧でくくってある文章は補足や追記。 12/6(金) 弦理論では、超対称性を要請しないとフェルミオンを扱えないのに、量子力学ではそんなものを課さずとも電子の振る舞いを調べられたのはなんでなのか…

弦理論ことはじめ

弦理論とは、文字通り、種々の粒子を1次元の大きさを持った弦と考える理論のことをいう。この弦は、内部に運動の自由度を持つという点で点粒子とは異なる存在だが、では弦の内部の運動を決める作用(あるいは運動方程式)はどのようなものか? いま、D次元ミン…

相対論的量子力学と確率解釈

シュレディンガー方程式を相対論的なものにする過程で、波動関数に対する確率解釈が成立しなくなるという話について再考した。 めんどうなので簡潔に。 まずはじめに思ったことは、確率密度ρ(x)=Ψ*(x)Ψ(x)はガリレイ変換に対しスカラーであるものの、ローレ…

情報熱力学1

体積2Vの箱の中に粒子が一つ閉じ込められています: つまりいまこの粒子はlog2Vのエントロピーを持っています(kTは略)。箱は、外部と熱平衡状態にあるとします。ここで、粒子にぶつかることなく箱の真ん中に仕切りを入れて、体積Vの2つの部屋に箱を分けるとし…

親子構造の統計(ベンフォードの法則)

いきなりですが問題です。 現在世界にはおよそ200の国がありますが、それぞれの国の人口数の首位の数(最も大きい桁の値こと。日本なら1億なので1、アメリカなら3億なので3)で、200カ国を1-9の9通りのグループに分けられます。さて、どのグループに属する国が…

9月の日記

9/1 生化学若手夏の学校@定山渓(札幌) が終了。ポスター発表で聞いた、ORFタンパクの話が非常に面白かった 9/2 札幌のいとこのうちで自転車を借りて、近所を走り回った。 札幌駅からそれほど遠くないところにある豊平川だが、眺めはとても良い 9/4 札幌の友…

8月の日記

途中で飽きそうだけど、毎日短くてもいいからつけてみる。ツイッターと似たようなことばかり書くと思う。 8/20(火) 昼過ぎに起きて、先輩の特別講演(数物セミナー)の発表練習を聞きに大学に行った。実は僕も特別講演を申請したのだが未だにほとんど準備して…

ブログ開設

夏休みの1/4がもう過ぎ去りましたが、相変わらずひまと退屈で持て余しているのでブログでも作ってみました(以前アカウントだけ作ってほとんど放置していた)。暇つぶしに色々書く予定