弦理論1.3 ポリャコフ作用
NG作用は、世界面の面積と解釈できるため非常に分かりやすいが、について多項式的ではなく、扱いにくい形をしている:
また経路積分は、分配関数
を計算することで行われるため、NG作用の経路積分は面倒な処理を要求されることになる。 実は、古典論的にNG作用と完全に等価であって、より扱いやすい表式が存在する(量子化後は、臨界次元と呼ばれる特定の次元でのみ等価である)。
まずNG作用における手続きを整理すると、
という“定義”のもとで、
が成立する、というものだった(変分原理)。 はについての変分を表す。
ここで、 を、定義ではなくという関数に対する“拘束条件”と見るならば、上の手続きは
と作用に対して、
を課すことと完全に同等である(ラグランジュの未定乗数法)。
いまは未定乗数法の単なる係数だから完全に任意に決められるが、経路積分のためにはの項が消去されるように選ぶべきである。つまり、
となるようにを決めればよい。この式から、
と選ぶならば、の第一項と第二項が相殺して、
となることが分かるから、これを元に新しい作用を
と書くことができる。これはポリャコフ作用(以後P作用)と呼ばれる。
整理すると、
さてP作用はまさに、上で述べたようにの2次で書かれている。 また、P作用からは次のようにして容易にNG作用に戻ることができる。 まずからが言えるから、これをに代入すれば
ところでこの表式は、クラインゴルドン方程式を満たすスカラー場を思い出させる:
いま注意すべきなのは、P作用に質量項がないからと言って必ずしも弦がmasslessだとは限らないことである。弦の場合、その振動状態が弦の質量をダイナミカルに決定するので、初めから手で質量を与える必要がない(というか不可能だ)からである。
さてこれ以降、世界面上の計量といった場合は、誘導計量ではなく補助場のことを指すものとし、添字の上げ下げもを用いて行うこととする(いざとなれば、からいつでも の形に書き直すことができるので、特に問題はない)。