弦理論ことはじめ

弦理論とは、文字通り、種々の粒子を1次元の大きさを持った弦と考える理論のことをいう。この弦は、内部に運動の自由度を持つという点で点粒子とは異なる存在だが、では弦の内部の運動を決める作用(あるいは運動方程式)はどのようなものか?

 

いま、D次元ミンコフスキー空間を考え、座標をX^{\mu}とする。

弦は長さのみを持つから、それが掃く領域は2次元面になる。これを世界面という(相対論では、粒子が描く軌跡が世界線と呼ばれた)。

\tauは弦の時間、\sigma(0\leq \sigma \leq \pi)は弦の内部の空間パラメータとすると、 (\tau,\sigma)が世界面上の座標となる。ミンコフスキー空間における弦の位置は X^{\mu}(\tau,\sigma)で表される。

 

 

 


弦の掃く面積が最小になる

一つの方法としては、相対論で使われる作用からのアナロジーがある。相対論では、粒子が描く軌跡の長さを作用とし、それが最小になるという条件を課して運動方程式を導く。弦理論では粒子は点ではなく弦であるから、作用は弦が掃く面積を意味する:

S_{NG}=- \displaystyle\frac{1}{2\pi \alpha^{\prime}}\int d\tau d\sigma \sqrt{-h}

。これを南部後藤作用という(係数 \displaystyle\frac{1}{2\pi \alpha^{\prime}}についてはひとまず置いておく)。

 

 

 


波動方程式

もう一つの方法は、古典力学における弦の振る舞いを利用するものである。そこでは弦は定常波を作って振動しており、波動方程式を満たす:

\left(\displaystyle\frac{1}{c^{2}}\displaystyle\frac{\partial^{2}}{\partial \tau^{2}}-\displaystyle\frac{\partial^{2}}{\partial \sigma^{2}}\right)X^{\mu}(\tau,\sigma)=0

いま cは光速ではなく、弦の内部で振動が伝わる速さである。これは、質量項のないクラインゴルドン方程式と同じ形をしているから、作用は

S=\displaystyle\frac{1}{2\pi\alpha'}\int d\tau d\sigma \partial_{a}X^{\mu}\partial^{a}X_{\mu}

という形で書けると推測がつく(aは、\tau,\sigmaを表す)。この二つの導入は一見異なっているが、実は同じであることが(少し調べると)わかる。次回はそれについて書く。