情報熱力学1

 


体積2Vの箱の中に粒子が一つ閉じ込められています:

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つまりいまこの粒子はlog2Vのエントロピーを持っています(kTは略)。箱は、外部と熱平衡状態にあるとします。ここで、粒子にぶつかることなく箱の真ん中に仕切りを入れて、体積Vの2つの部屋に箱を分けるとします。すると粒子はどちらかの部屋に入るのでその体積はVになります:

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さてこのとき、この系のエントロピーはlogVに減るのでしょうか?粒子が存在しうる領域の体積は2Vのままですが、実際に動きうる体積は明らかにVに減っています。エントロピーはlogVとlog2Vのどちらでしょうか?

「左右どちらの箱に入っているかは分からないといえど、動き回りうる体積がVなのは間違いがないのだから、状態数もVとしてlogVとするのが自然だ」というのが僕の個人的な考えです。ただこうすると、熱力学第二法則はどうなるんだという話に当然なります。仕事をせずにエントロピーが減っているわけですからね。

 


そこで、log2Vのままではないかとなるのですが、これもこれで少しおかしいことが起きてしまうのです。それは次のような思考実験で見えてきます。

 

出木杉-のび太のパラドクス


いま、出木杉くんとのび太くんの2人がいます。

彼らの前に体積Vの箱が2つあり、片方に1個の粒子が入っています。2人は、どちらの箱に粒子が入っているか知っています。いま粒子のエントロピーSはlogVといえますね:

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さて、この状態で時間が経つにつれ、のび太くんはどちらの箱に粒子が入っているか、忘れてしまいました。一方出木杉くんはきちんと覚えていたとします:

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すると出木杉くんから見るとS=logVのまま。ところが先ほどの議論を踏まえるならば、のび太からはS=log2Vになってしまったことになりますね。のび太は、2つの箱のどちらかに粒子があることはわかっていますが、どちらにあるかは知らない(忘れてしまった)わけですから。上記の過程で箱と粒子の状態自体は全く何も変わっていないのにも拘らずエントロピーが変化してしまったことになり、これは明らかにおかしいことになります。

 


以上の内容を要約します。

元々の問いは

「真ん中の仕切りによって体積Vの2つの部屋に分けられてはいるが、どちらにあるかは分からない1粒子のエントロピーはlogVかlog2Vか?」

でした。

logVとすれば、第二法則と合わなくなる。一方でlog2Vとすれば、のび太エントロピー計算がおかしくなる。どうすればいいのか?

 


今回は、以上の問題提起のみを記します!笑

どうやって解決するかは、次回に書きます。