一般相対論

一般相対論について簡潔な解説を書きます。一般相対論というのは初見では難解そうに思えますが、実は非常にシンプルな理論です(方程式を解くのは大変ですが)。ここでは基本的な概念の解説と、測地線の方程式/アインシュタイン方程式の導出、そのあとは宇宙論ブラックホールなどなど、扱えればと思います。いつになるやら分かりませんが。なるべく平易で、短く簡潔な文章を心がけます。気が向いたときに少しずつ加筆と修正をします。質問や文句などはコメントにお願いします

重力の理論

一般相対論の出発点は極めて明確であり、それは特殊相対論(慣性系の理論)を、より一般の非慣性系へと拡張することである。ローレンツ変換のみならず、一般の座標変換(極座標とか)を取り入れるということ。面白いことに、この試みはただちに一般相対論が必然的に重力理論になることを示唆する。等価原理を認めれば、非慣性系での物体の加速は、(たとえそうでなくても)重力によるものと解釈できるからである。

さて、たたき台となるニュートン力学には、重力について重要な式が二つある。まず一つは運動方程式

	m\ddot{\boldsymbol{r}}=-\nabla \phi \tag{1}
であり、もう一つはポアソン方程式

	\Delta \phi=4\pi G\rho \tag{2}
である。\rhoは物質の質量密度分布である。
このふたつは、明らかに一般相対性原理の要請に合わない。つまり、一般的な座標変換に対し方程式の形が変わる(ガリレイ変換の場合には問題はない)。それどころかローレンツ共変ですらない。式(1)はそもそも成分が3つしかないし(相対性原理を満たすならば、方程式は少なくとも4つないといけない)、ラプラシアンも形が変わる。

共変微分

さて、まずは相対性原理的な観点から、微分という操作を考え直す必要がある。
ユークリッド空間にとった直交座標では、基底ベクトルはどこでも同じである。しかしユークリッド空間上の極座標とか、曲がった空間での座標系は、場所によって基底ベクトルの向きや大きさが変わることがある。
たとえば、z軸を地面と垂直に取った場合、日本とブラジルではz軸の向きは真逆になる。そこで、一般の座標系を相手にする場合は、何かのベクトルの変化を調べる際、基底ベクトルの変化も加味して
D\boldsymbol{A}=d( A^{\mu}\boldsymbol{e}_{\mu})=dA^{\mu}\boldsymbol{e}_{\mu}+A^{\mu}d\boldsymbol{e}_{\mu}\tag{3}
というふうにしなくてはならない。
ここで、基底ベクトルの微分\partial _{\nu }\boldsymbol{e}_{\mu }も、4つの基底ベクトルの線型結合でかけるため、その係数を
\partial _{\nu }\boldsymbol{e}_{\mu }=\Gamma ^{\alpha }_{\mu \nu }\boldsymbol{e}_{\alpha }\tag{4}
とおくと、
	D\boldsymbol{A}=\left( dA^{\mu }+\Gamma ^{\mu }_{\nu \lambda }A^{\nu }dx^{\lambda }\right) \boldsymbol{e}_{\mu }\tag{5}
ゆえに成分のみの式を書くことができて、
DA^{\mu}=dA^{\mu}+\Gamma ^{\mu }_{\nu \lambda }A^{\nu }dx^{\lambda }\tag{6}
これを共変微分といい、またこの\Gamma ^{\mu }_{\nu \lambda }をクリストッフェル記号という。この記号は、一見テンソルに見えるが実はテンソルではない(それについては下記で解説する)。とにかく、クリストッフェル記号というのは基底ベクトルの変化の度合いに関係する量であり、したがって重力とも関係してくるはずである(ミンコフスキー空間では、当然全成分ゼロである)。

共変微分係数


	D_{\lambda}A^{\mu}=\partial _{\lambda}A^{\mu}+\Gamma^{\mu}_{\nu\lambda}A^{\nu}\tag{7}

となる。
2階のテンソルに共変微分を施すときは

\begin{split}
	&D_{\lambda}(A^{\alpha}B^{\beta})\\
	&=(\partial _{\lambda}A^{\alpha}+\Gamma^{\alpha}_{\nu\lambda}A^{\nu})B^{\beta}+A^{\alpha} (\partial _{\lambda}B^{\beta}+\Gamma^{\beta}_{\nu\lambda}B^{\nu})\\
	&=\partial_{\lambda}(A^{\alpha}B^{\beta})+\Gamma^{\alpha}_{\nu\lambda}A^{\nu}B^{\beta}+\Gamma^{\beta}_{\nu\lambda}A^{\alpha}B^{\nu} 
	\end{split}
という感じ。

共変微分の別の導入

違う見方で共変微分とクリストッフェル記号を導入してみます。
ローレンツ変換に際して、速度ベクトルの微分

	\displaystyle\frac {du^{\prime\mu }} {d\tau }=\displaystyle\frac{d}{d\tau}\left(\displaystyle\frac{\partial x '^{\mu}}{\partial x^{\nu}}u^{\nu}\right)=\displaystyle\frac{\partial x'^{\mu}}{\partial x^{\nu}}\displaystyle\frac{dx^{\nu}}{d\tau}=\displaystyle\frac{\partial x'^{\mu}}{\partial x^{\nu}}u^{\nu}\tag{8}
と変換し、テンソルの変換則を満たしていた。
しかし一般の座標変換に対しては

	\displaystyle\frac{d}{d\tau }(u^{\mu})=\frac {d}{d\tau }\left(\Lambda^{\mu}_{\nu^{\prime}}u^{\nu^{\prime}}\right) =\left(\partial_{\lambda^{\prime}}\Lambda^{\mu}_{\nu^{\prime}}\right)u'^{\nu}u^{\prime\lambda}+\Lambda^{\mu}_{\nu^{\prime}}\dot{u}^{\nu^{\prime}}\tag{9}

となって右辺第二項が残る。

そこで両辺に\Lambda^{\alpha^{\prime}}_{\mu}をかけて、

	\Lambda^{\alpha^{\prime}}_{\mu}\displaystyle\frac{du^{\mu}}{d\tau}
	= \Lambda^{\alpha^{\prime}}_{\mu}\left(\partial_{\lambda^{\prime}}\Lambda^{\mu}_{\nu^{\prime}}\right)u'^{\nu}u^{\prime\lambda}
	+\displaystyle\frac{du^{\prime\alpha}}{d\tau} \tag{10}


ここで、先の共変微分の式と見比べてみて、


	\Gamma^{\prime\alpha}_{\lambda\nu}= \Lambda^{\alpha^{\prime}}_{\mu}\left(\partial_{\lambda^{\prime}}\Lambda^{\mu}_{\nu^{\prime}}\right)=\displaystyle\frac{\partial x^{\prime\alpha}}{\partial x^{\mu}}\displaystyle\frac{\partial ^{2}x^{\mu}}{\partial x^{\prime\lambda}\partial x^{\prime \nu}}\tag{11}

とすれば、

	\displaystyle\frac{\partial x^{\prime\alpha}}{\partial x^{\nu}}\displaystyle\frac{Du^{\nu}}{D\tau}= \displaystyle\frac{Du^{\prime\alpha}}{D\tau}\tag{12}

というテンソルの変換則が得られた。つまり\displaystyle\frac{Du^{\prime\alpha}}{D\tau}テンソル