量子論の歴史2 原子

前回は、電磁場のエネルギー量子化ののち、量子化条件が電子にも適用できる形に一般化されたことを書いた:

\oint p_{i}dq_{i}=n_{i}h

これが、ボーアソンマーフェルトの量子化条件である。実はこの式は、見慣れた正準交換関係

\lbrack x_{i},p_{j} \rbrack=i\hbar\delta_{ij}

の原型である。あと何回分かの記事で、この量子化条件がいかに正準交換関係に行き着くかを見る。

さて、光の舞台は黒体輻射であったが、電子の舞台は原子核である。古典的に考えれば、陽子を中心に周回する電子は、電磁波を発してエネルギーを失い、とても安定な状態では いられない。ここでボーアは、次のように考えた:

・原子内の電子の軌道は、量子条件を満たす定常状態のみが許される

・定常状態にある電子は電磁波を出さない

・定常状態から別の定常状態に映るとき、光が射出される

こうして、光子の考察から得られた量子条件が原子に適用され、離散化の考えが電子にも持ち込まれた。